ホルミシス 自然放射線 ゾウリムシ
「日本放射線技師会雑誌」(1997年5月号)に、金庫を使ったゾウリムシの実験が掲載されていました。以下に簡単にまとめました。興味のある方は是非御覧下さい。
診療放射線技師加藤幸弘氏による実験で、鉛壁の金庫でゾウリムシを飼育し、増殖率を調べました。金庫は自然放射線を遮断するために用い、金庫の厚さは片方が5cm、もう片方が10cmに設定し、金庫の中にいるゾウリムシの成長を比較対照しました。その結果、鉛壁5cmの方ではゾウリムシは10%増加しましたが、一方鉛壁10cmの方はゾウリムシは5%しか増加しませんでした。
鉛壁の金庫で自然放射線が遮断されているので、鉛壁の金庫にいるゾウリムシは自然環境以下の放射線しか浴びることができません。鉛壁の厚さが厚くなるほどゾウリムシの増殖率は低いという実験結果は、ゾウリムシの健全な成長に自然放射線が必要だという事実を示唆しています。
このゾウリムシの実験に対し、近藤宗平博士は「放射線が自然環境以下になると発育不良が起こる。ゾウリムシやランソウは、宇宙放射線が遮断されると増殖速度が落ちる。」と述べています。この言葉から、近藤宗平博士が人間の成長には放射線が必要であると考えているのが分かります。また、J・キャメロン(ウィスコンシン大学名誉教授)は「放射能欠乏症」という言葉を用いています。この「放射線欠乏症」という言葉には、最低限の放射能は人間の成長に栄養として必要不可欠であると言う意味が込められています。両者共に、自然放射線が生物の成長に必要であると考えている点で共通しています。
「ホルミシス」とは、低線量の放射線は身体に良い影響を与える事を言います。以前ブログで紹介した坂本澄彦教授の臨床実験では、低線量の放射線を癌患者に照射した場合、照射しなかった場合と比べて、10年後生存率が50%から84%に上昇するという結果が出ました。低線量放射線を全体照射した方が10年生存率が高かったのは、低線量の放射線がにより身体の癌細胞への免疫力を高められ、癌細胞の増殖を抑制されたからだと考えられています。
坂本教授の臨床実験がゾウリムシの実験と違うのは、ゾウリムシの実験の方は自然放射線の量が自然環境以下である点です。しかしながら、前者の実験は放射線は生物の健全な成長に必要である事を示唆し、後者の実験は放射線が癌細胞に対する免疫力を向上させ癌細胞の増殖の抑制に必要である事を示唆しており、両者の実験は共に低線量の放射線を身体にプラスの影響を与える事を示唆している点で共通しています。
高濃度の放射線地区の方が癌死亡率が低いという調査結果が出た陽江地区・インドのケララ州、コバルト団地のケーススタディでも分かるように、低線量の放射線はヒトの健康にプラスに働き、その意味では、「放射線=悪」ではなく、むしろ最低限の放射線は人間に成長に必要不可欠であると言えるでしょう。
このゾウリムシの実験は、生物の成長に自然放射線は必要である事を示唆しており、低線量の放射線が身体の健全な成長を促す、すなわち低線量の放射線は身体に良い影響を与えるという点で、「ホルミシス」理論を根拠づけるケーススタディとして考えられています。