ホルミシス効果とは

 「ホルミシス効果」とは、ある物質が多量に用いられた時は有害であるのに微量に用いた時は有効に作用することを言います。この言葉はギリシア語の「hormaein」(刺激する)に由来すると言われています。

 「ホルミシス効果」の歴史・経緯について簡単に説明いたします。

 「ホルミシス効果」を最初に提唱したのは、トーマス・D・ラッキー博士です。そのきっかけは、NASA(米航空宇宙局)から、宇宙における放射線の宇宙飛行士に与える影響について調べるよう依頼を受けたことに始まります。一般に、宇宙では地上の100倍以上の放射線を浴びます。ラッキー博士がバイタルデータを調べたところ、宇宙飛行士のデータの数値がよいことが分かりました。

 ラッキー博士は、依頼を受けてから10年以上も研究をつづけ「Health Physics」という米国保険物理学会誌に研究結果を発表しました。その研究結果の内容は「100倍もの放射線は人体に有益な作用を与える」というものでした。この研究結果が「ホルミシス効果」の発見の始まりです。

 今まで、放射線学会を支配してきた学説は「微量な放射線でも危険である」という学説でした。この学説は、H・J・マラー博士によって提唱された考えです。「直線的無しきい値仮説」とも言われています。マラー博士は、オスのショウジョウバエにX線の放射線を照射する実験をしました。その実験で得られた結果は、染色体異常の数が増えるというものでした。その実験結果を基に、「当てた放射線量と発生した染色体異常数は比例する」という学説がマラー博士によって提唱されました。

 ラッキー博士が提唱した「ホルミシス効果」は、当時放射線学会を支配していた「直線的無ししきい値仮説」と真っ向から対立するものでした。50年以上もマラー博士の「直線的無しきい値仮説」によって放射線の安全基準が設定されたこともあり、ラッキー博士が提唱した「ホルミシス効果」は無視され続けてきました。

 ラッキーの論文(ホルミシス効果「低線量の放射線が身体によい影響を与える」)が脚光を浴びるようになったのは、電力中央研究所の服部禎男博士がラッキー博士の論文を読んだことに始まります。服部博士が、アメリカ電力研究本部に「ラッキー博士の論文に対する回答が欲しい」と手紙を書いたことがきっかけで、アメリカエネルギー省が動き、世界中の専門家が集まり国際会議が開かれました。それ以降、研究者による放射線の研究が盛んに行われ、実験データから「低線量の放射線は身体によい」というラッキー博士の学説が見直されるようになりました。日本でも「放射線ホルミシス研究委員会」という学会が設立され、「ホルミシス」について本格的に研究されるようになりました。

  一般論として、『DNA修復』のメカニズムについて以下のことが言われています。

 

「放射線が強すぎるとDNAの損傷が激しく修復することができないが、弱い放射線ならDNAの修復機能が向上するためDNAは修復される。また、修復されなかったDNAもアポトーシスによって破壊されてしまうので異常細胞は残らない。」

 

 マラー博士のオスのショウジョウバエをサンプルにした実験を行いました。オスのショウジョウバエの精子はDNA修復作用を持たない細胞でした。オスのショウジョウバエはDNA修復作用を持たない生物だったため、多数の染色体異常数が生じたのです。オスのショウジョウバエは、放射線の実験のサンプルとしては、あまりにも特殊であったため「放射線=悪」という結果・学説になった言えなくもありません。現在では、低線量の放射線を使った実験が行われ、低線量の放射線は身体によい影響を与えることが立証されるようになりました。

「ホルミシス」には以上のような歴史・経緯があります。