丸川発言「何の科学的根拠もなく、時の環境省が決めた。」

 

 福島第1原発事故から5年経った今も10万人近い福島県民が余儀なく退避生活をされています。原発事故が起こった時に、国は年間1ミリシーベルト」の除染目標を掲げました。この除染目標に対し、丸川珠代環境相が下記の発言をされました。

 

「何の科学的根拠もなく、時の環境相が決めた」

 

 問題発言となった丸川珠代環境相の発言に対し自分なりに思ったことを簡単に書きました。ざっと読んでいただければ幸いです。

 

 

   ICPR(国際放射線防護委員会)の勧告を受け、1ミリシーベルトの除染目標が定められました。それ故、1ミリシーベルトという数値に「科学的根拠」があるか否かはICPRの勧告が適切かどうかという視点で考える必要があります。

 

   ICPRの勧告は「できるだけ不要な被曝は少なくすべき」という考えによるもので、マーラー博士の「直線しきい値無し仮説」がベースにあります。

  

  この「直線しきい値無し仮説」とは、放射線の害は被曝した放射線の量に比例するという考え方です。大昔、マーラー博士は雄のショウジョウバエに放射線を照射し、染色体を調べる実験をしました。その結果、放射線の量が多ければ多いほどショウジョウバエの染色体に異常が生じる事実が判明し、マーラー博士は、「 直線しきい値無し仮説」を提唱しました。

 

 しかしながら、この雄のショウジョウバエ、DNAの修復機能を持たない特殊な生物でした。また、当時はDNAに修復機能があることすら知られていない時代でした。それ故、照射した放射線の量が多ければ多いほど生まれてくる ショウジョウバエのDNAの染色体に異常が生じ、「直線しきい値無し仮説」が正しいものとして考えられるのも無理からぬことでした。

 

 しかしながら、その後、ラーキー博士が地上の100倍以上の放射線を浴びる宇宙飛行士のバイタルデータを調べたところ、多量の放射線を浴びた宇宙飛行士のバイタルデータの方が地上で生活している人より良い事が判明しました。その後も、大学や研究所などの実験によって、低線量の放射線身体に良い影響を与える効果(『ホルミシス理論』)を裏付ける多数のデータが得られました。

 

   しかしながら、そのような実験データが出て、「ホルミシス理論」裏付ける科学的根拠が示されているのにもかかわらず、今なお、ICPRは「直線しきい値無し仮説」を支持し、その仮説を前提に放射線リスクを評価しています。

 

 

 何故、さまざま『ホルミシス理論』を裏付ける実験結果が出ているのにも関わらず、ICPRが直線しきい値無し仮説を採用しているか?

 

「低線量放射線の影響は分からないが、少量の放射線でも悪い影響があると考えた方が安全だ」と考えているのが理由の1つ挙げられます。

 

 その他に、長年採用してきた直線しきい値無し仮説を変える事で、ICPRそのものの正当性及び存在意義を問われかねない事態を避けたかったからではないかと考えられます。

 

 今では、この「直線しきい値無し仮説」及びICPRの放射線リスクの評価の正当性に疑問符が打たれ、『ホルミシス理論』の方が正しいというのが学界では通説になっています。

 

 それ故、正当性に問題のある「直線しきい値なし仮説」をベースにしたICPRの勧告は決して科学的根拠に基づいるとは言えず、丸川珠代環境相の発言は決して間違っていないと考えます。