廃棄される歯を有効活用した再生医療

 

 読売新聞に再生医療の記事が掲載されていました。乳児の歯の幹細胞をマウスの肝臓に移植することでマウスの肝機能を修復させることに成功した話です。興味のある方は、是非御覧下さい。

 

 

  子どもの乳歯から、様々な細胞に変化できる幹細胞を取り出して肝臓の細胞に変化させ、肝臓病のマウスに移植して症状を改善させることに成功したと、九州大の田口智章教授(小児外科)らが、大阪市で開かれている日本再生医療学会総会で発表した。

 

 

 人間の細胞をラットに移植。移植は成功し、ラットの肝機能は回復。再生医療による肝機能障害の治療には期待が持てそうです。

 

 

 抜けた乳歯を譲り受け、内部の歯髄という部分にある幹細胞を採取。変化を促すたんぱく質を加えて培養すると、肝臓の細胞とよく似た細胞が大量にできた。肝硬変のマウスの肝臓に移植すると、症状が改善したという。

 

 

 歯の細胞にたんぱく質を加えて培養すると肝臓の細胞と似た細胞ができるのは意外でした。乳歯には、増殖能力と臓器や組織への分化能力が高い幹細胞が多く含まれています。また、自分の細胞を将来、自分の身体に戻すため拒絶反応の心配もありません。その点において、この歯髄の移植による再生医療もの有用性は極めて高いと言えるのではないでしょうか。

 

 

乳歯の幹細胞は、廃棄される歯が原料なので入手しやすい

 

 「入手しやすい」ということから、実用性の面でも非常に優れていると言えるでしょう。

 ちなみに、この歯の保管方法についてですが、

 虫歯のない乳歯を提携クリニックで抜歯し、その乳歯の中の歯髄を取り出し、幹細胞の分化・培養を行い冷凍保存します。乳歯1本の保管料は10年間で52万5000円。その後10年毎に更新料としてその半額が必要とだと言われています。10年間の保管費用525,000円は少しばかり高いかもしれません。

 

 

 

 田口教授は「将来は、生まれつき肝機能が悪い難病の治療に役立つ可能性がある」と言及。

 

 動物実験は半年程度で終わりすでに臨床応用への道筋がついている点、現在、肝臓以外にももう2種類の臓器の細胞分化あるいは臓器再生そのものに成功している点から、今後の研究成果に期待が寄せられているそうです。