1型糖尿病と低レベル放射線
1型糖尿病とII型糖尿病について、前回のブログでお話ししました。
今回のブログの内容は、低線量放射線における1型糖尿病への効果についてです。
1型糖尿病 は一種の免疫不全で起こるもので、免疫の仕組みが暴走して膵臓でインシュリンを分泌するランゲルハンス島のベータ細胞を損傷させてしまい、インシュリンが出なくなって血糖値が上がるものです。この時、活性酸素が非常に大きな役割を果たしています。
1型糖尿病を発症する実験用マウスに生後12〜13週、または、14週で、0.5グレイというガンマ線を照射したところ、通常は15週で発症が見られ22週で60%が発症するのに、照射群では有効な発症率の抑制が見られました。特に、生後13週で照射した場合、21週までの発症率はゼロでした。
また、13週目に0. 5グレイのガンマ線を照射したマウスの膵臓を摘出して病理検査をしたところ、アポトーシスを起こした細胞の数が減っている事が分かりました。放射線が膵臓のアポトーシスを抑制する事で、糖尿病の発症を抑えているのです。どうして、アポトーシスが抑制されるかというと、低線量放射線が活性酸素を除去しているからだと考えられています。放射線を照射すると生体内の水分などから活性酸素が作られます。活性酸素は毒性が強くDNAを傷つけ、癌や老化の原因となると考えられています。したがって、生体は活性酸素から身を守らなければなりません。
活性酸素が生体内に出現すると、遺伝子に仕組まれている活性酸素に対処する仕組みのスイッチが入り、活性酸素を除去していく物質がどんどん作られるのです。もちろん、多量の放射線を浴びれば放射線を作る活性酸素により生体がダメージを受けますが、適当量の低いレベルの放射線を浴びた場合には生体が作り出した活性酸素に対する防御システムは放射線の作る活性酸素から身を守るばかりではなく、ベータ細胞を損傷する免疫細胞の出す活性酸素をも打ち消してしまうわけです。